February 21, 2009

公会計概念フレームワーク

桜内文城です。

今月、日本公認会計士協会・公会計委員会のIPSASB(国際公会計基準審議会)対応専門部会の会合に3回にわたり、出席しました。

現在、国際会計士連盟(IFAC: International Federation of Accountants)の国際公会計基準審議会(IPSASB: International Public Sector Accounting Standards Board)において、会計基準の基礎概念などを規定する「概念フレームワーク(Conceptual Framework)」の議論が進められています。今月の日本公認会計士協会での会合では、IPSASBの事務局提案(下記資料1)に対して日本公認会計士協会としてのコメントをつけるという作業が行われました。まだ議論は始まったばかりで、全部で4つの議論(フェーズ)の第1段階にすぎませんが、公会計の財務報告の目的など、非常に重要な論点が含まれています。

【資料1】「consultation_paper_conceptual_framework_ipsasb1.pdf」をダウンロード

概念フレームワークは、会計基準を設定する際、各勘定科目の定義や認識・測定方法において論理的な整合性を保つため、大きな方向性を示すものです。概念フレームワークに反する会計基準の規定は無効だという意味で、会計基準にとっての憲法のような存在だとも評されます。

日本公認会計士協会ではこういった国際的な議論に先駆けて、2001年7月に「公会計フレームワーク検討プロジェクトチーム」を設置したうえで、2003年3月に討議資料「公会計概念フレームワーク」(英文版は下記資料2)を公表しました。

【資料2】「050912_conceptual_framework_for_public_sector_accounting.pdf」をダウンロード

今回の国際公会計基準審議会(IPSASB)の事務局提案において重要な点は、「財務報告の目的」として、①説明責任目的(accountability purposes)と②資源配分、政治的及び社会的な意思決定(making resource allocation, political and social decisions)の二つが挙げられていることです。この点、我が国の公会計概念フレームワークにおいても、①アカウンタビリティ(政府の受託者責任の明確化)と②ガバナンス(政府の資源配分に関する意思決定の規律付け)を挙げており、ほぼ全面的に我が国の主張が受け入れられたものといえます。

この「財務報告の目的」という論点は、公会計に関するすべての議論のスタート地点です。そこから正確にロジックが展開されていくことで、例えば「財務報告の範囲」についても、決算情報だけでなく予測財務情報が含まれることが導かれるほか、資産や負債の定義、その評価方法、財務情報の表示方法(財務諸表体系)など、重要な方向性が論理的に導かれていくのです。

ちなみに、我が国の地方自治体向けの会計基準(総務省・新地方公会計制度研究会報告書「基準モデル」)第24段落においても、同様の趣旨の規定が置かれてます。「公会計の基礎概念の観点からすれば、この財務書類を作成する目的は、地方公共団体が住民に対してその責任を会計的に明らかにするという意味で、「パブリック・アカウンタビリティ」にある。具体的には、決算分析のための情報(以下「決算情報」という。)を会計的に明らかにすることと、予算等の政策形成上の意思決定を住民の利益に合致させるための参考情報を提供することを意味する」。その意味でも、我が国の公会計基準は国際的なデファクト・スタンダードともなり得るクオリティを備えているといえるでしょう。

これまで企業会計の分野をはじめ、各国の国益がぶつかり合う国際的なルール設定の場で日本政府がきちんと主張すべきことを論理的に主張していくことができず、我が国の国益を著しく損なうことが多々ありました。銀行業務に関するBIS基準(自己資本比率規制)などは、日本に「失われた10年」ともいわれる1990年代のバブル崩壊とそれに伴う経済危機をもたらしたとさえいえるのではないでしょうか。スポーツの世界でもそうです。背泳のバサロ泳法、スキーのジャンプ、柔道の得点制など、日本人が努力に努力を重ねてきたにも関らず、その努力を無にするような国際的なルール変更が相次いできました。

今回の議論は始まったばかりですが、我が国が国際的なルール作りをリードしていくことにより、真の国益を守っていくという、一つの先駆けとなれば・・と願っています。

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November 11, 2006

見えるもの、見えないもの

これまで私は、公会計という新しい学問分野において、ロック流の社会契約論(信託説)やアメリカ独立宣言、そして日本国憲法(前文第1文、1条、11条、13条、83条等)で採用されている国民主権の原理をベースとして、国民に対する政府の財務情報(公会計情報)の作成と開示に必要な公会計の基礎概念のロジック(論理)を積み重ねてきました。

そしてその論理的な帰結として、企業会計よりも拡張された勘定体系と財務諸表体系、予算編成上のシミュレーションの仕組み(国ナビ・自治ナビ)などが導かれることを明らかにしました。ささやかではありますが、そのような貢献を日本公認会計士協会学術賞として正当に評価していただいたものと感謝しております。

特に、公認会計士や会計学者の先生方、会計ソフトの開発にご尽力いただいた各ベンダーのシステム・エンジニア(SE)の方々には本当にお世話になりました。会計士やSEの方々にとって公会計という分野はほとんど「お金」にならないにも関わらず、私の志と理論にご賛同いただき、皆、手弁当でプロジェクトに参加していただきました。また自民党政調会等、政治家の先生方も、公会計改革という選挙の「票」にもならず、かつ財務省をはじめ官僚の抵抗が極めて強い分野であるにも関わらず、我が国の財政制度及び財政政策をより良いものに改革していくためにお力添えをいただきました。本当に私心なく「公」のために尽くすという皆様の志を集めることによって、ここまで到達することができたと感じております。この場を借りて、改めて心より御礼申し上げます。

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June 22, 2006

自治体向け公会計基準

桜内文城です。

今日(22日)の日経朝刊5面で、「民間並み財務諸表 自治体、3年内に作成」という記事を見かけました。その記事によれば、総務省が設置した「有識者会議が自治体向け公会計の基準をまとめた」云々とのことでしたが、正確にいえば、総務省の「新地方公会計制度研究会」から5月18日に公表された報告書のことを指した記事だと思われます。

(知り合い方の中にはご承知の向きも多いかと思いますが)同研究会には、僕も委員の一人として参加していました。報告書の公表から一ヶ月以上も経って、今頃どうしてこのような取り上げられ方をするのかよくわかりませんが、もしかすると夕張市の財政再建団体の申請といった話題に関係しているのかもしれません。あるいは、先週水曜(6月14日)の同じく日経の「経済教室」で、早大の小林先生がその報告書について解説を加えてくださったことも影響しているのでしょうか。いずれにしても、我が国の公会計制度の整備が少しずつでも前進することを期待して止みません。

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June 18, 2006

受賞の御礼

お久しぶりです。桜内文城です。

このたび拙著「公会計」(NTT出版)が第34回日本公認会計士協会学術賞を受賞しました。選定の経過及び理由等につきましては、JICPAジャーナル7月号190ページ以下をご覧ください。公会計制度改革の世界に身を投じて早や6年。多くの方々からご支援をいただいたお陰で、ここまで来ることができました。関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

もっとも、今回の受賞は一つの通過点であって、「政府の意思決定のあり方を根本的に変革する」という公会計制度改革の本来の目的を達成するためには、まだまだ多くの仕事が残されています。引き続き皆様方のお力添えを賜りますようお願い申し上げます。

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February 20, 2006

参議院決算委員会(2月15日)

毎度のことですが、大変ご無沙汰しております。桜内文城です。

昨年末に更新して以来ですので、今年に入って初めての更新となります。(*^_^*) 公会計の関連でもいろいろと動きはあるのですが、ブログ上のネタとなるべき話題に乏しく、非常にのんびりしたペースでの更新となっています。

さて、標題ですが、先週(2月15日)、参議院決算委員会の参考人質疑に参考人として出席し、「特別会計の現状と課題」というテーマでお話をさせていただく機会がありました。その模様は参議院のビデオライブラリーから動画でご覧になることもできます。

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December 28, 2005

日経29面

桜内文城です。

大変ご無沙汰しておりました。このところ、ブログに掲載できるようなネタに事欠いており、約2ヶ月振りの更新となりました。(^_^;)A

さて、今回のタイトルですが、本日(12月28日)の日経朝刊紙上で、ちょろっとですが顔写真入りで記事が出ています。と言っても、別に何かしでかした訳ではなく、公会計に関する特集記事の一環で、少しばかり記事が出たというものです。

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October 16, 2005

出張報告&新学期開始

桜内文城です。毎度のことですが、(月イチ程度の)久しぶりの更新です。m(__)m

簡単な近況報告をします。本当はもう少しタイムリーかつ詳細にお伝えしたいのですが、なかなか時間がとれず、概要のみ書きます。

9月28日(水)から10月8日(土)にかけて、米国(ボストン→ニューヨーク→ワシントンDC)への出張に行ってきました。主目的は、IMFでの会議(Task Force on the Harmonization of the Public Sector Accounting)に出席し、英訳版「公会計概念フレームワーク」をプレゼンすることでしたが、(途中、内閣府の課長補佐と一悶着あったものの)何とか無事、任務は果たせたかな?と思います。

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August 31, 2005

マニフェスト009

桜内文城です。今回は自由民主党のマニフェストについて触れます。

自民党のマニフェスト「自民党からの120の約束」の9番目「009.歳入・歳出一体の財政構造改革を実現」のうち、「⑥公会計・『国家財政ナビゲーション』の整備」という項目をご覧になって、ピンときた方もいらっしゃるかと思います。これはお察しの通り、拙著「公会計革命」及び「公会計」でご紹介した「国ナビ」開発プロジェクトを指しています。もちろん総選挙の結果次第ですが、「国ナビ」及び「自治ナビ」システムの実現もあと一歩というところまで来ているということです。

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August 03, 2005

仕訳合宿

(例によって)またまたご無沙汰しておりました。桜内文城です。

先週、新潟県の「雪だるま高原・キューピットバレイ」(上越市)で恐怖の仕訳合宿を挙行いたしました。公認会計士やSE、そして地方自治体職員等、総勢十数名の方々と公会計のディープな世界に浸ってきました。

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April 17, 2005

憲法改正

桜内文城です。長らくご無沙汰しておりました。この一ヶ月以上、日々の忙しさにかまけて更新を怠っていました。m(__)m

ところで、先週(4月15日)、衆議院憲法調査会から700ページを超える膨大な最終報告書が公表されました。その中で「財政民主主義」に関する箇所(418ページ以下)では、僕が参考人として意見陳述したときの概要(公会計制度のあり方等)が以下のように掲載されています。

財政民主主義の実質化の具体的方策として、別項で記述する国会による財政統制のほか、次のような意見が述べられた。

a 財政の実態に関する国会や国民の理解が促進されて初めて国会や国民による財政統制が可能になる。そこで、現在の複雑な財政制度の下においては、国民の現在負担及び将来負担を含めた財政情報を国民に分かりやすく提供する必要がある。

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