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April 13, 2010

公開!マニフェスト検討会議(第2回)「保守主義」

(桜内)今回は、政治理念としても重要な「保守主義」についてお話したいと思います。

(友人A)前回の「デフレ脱却」も大きなテーマでしたが、今回の「保守主義」もまた非常に大きなテーマですね。

(桜内)この「公開!マニフェスト検討会議」の連載企画では、まずは僕自身の政治理念や政治的方向性を明確に打ち出したいと考えています。そして、読者の皆さんとの議論の中で、具体的な政策やマニフェストを練り上げていければ最高ですよね。

(友人A)さて、最初の質問ですが、これまで自民党が「保守」、旧社会党が「革新」というイメージを持っていたのですが、自民党を離党した渡辺喜美さんが代表を務めるみんなの党に属する桜内さんは、ぶっちゃけどうなんですか?

(桜内)僕は、政治家を志す者として、日本の歴史・伝統に基づく「保守主義」の政治を目指したいと考えています。そして、日本の未来を切り拓くためにも、日本の歴史・伝統に学ぶとともに、秩序ある自由な社会を「保守するための改革」を実現しなければならないと考えています。

(友人B)とすると、そもそも「保守」って何なのかな?

(桜内)僕はアメリカに留学していた頃に政治学を勉強していたのですが、英米流の政治思想としては、保守主義とは、秩序ある自由な社会を「保守」するため、社会で積み重ねられた伝統を尊重することを意味します。つまり、歴史の選択に耐えてきた伝統こそが自由と自由とのぶつかり合いを調整する秩序を生み出し、それにより真の意味で自由な社会を「保守」することができると考えるのです。

(友人C)歴史や伝統を尊重するということは、改革を否定し、単なる現状維持につながる恐れもあるんじゃないですか?

(桜内)確かに保守主義は、伝統を尊重し、過去と現在との歴史的結びつきを重視します。しかしそれだけでなく、未来に着実に進んでいくためには、歴史から学び、自らを改革しなければならないと考えるのです。イギリスの近代保守思想の祖と呼ばれるエドマンド・バークは、未来に目を向けて「保守するための改革」を主張しました。盲目的に過去の社会体制に憧れ、単なる現状維持を求める「守旧」ではなく、真の意味で自由な社会を「保守」するためにこそ、改革が必要だと考えるのが保守主義なのです。

(友人D)なるほど。規律ある自由な社会を保守するための改革を目指すのですね。

(桜内)今、僕たちが未来に目を向け、より良い日本の国家、社会を創っていこうとするとき、そのような日本の伝統の中で何を「保守」し、何を「改革」すべきなのかを見極める目ヂカラを発揮しなければなりません。

(友人E)政治理念としての保守主義についてはよくわかりました。では、保守主義から導かれる具体的な政策としてはどのようなものがありますか?

(桜内)そうですね。例えば、社会の基盤、構成単位ともいえる「家」ないし「家族」というものについて、保守主義の観点から考えてみましょう。僕は、第二次大戦後の新憲法制定、そしてそれに伴う民法家族編・相続編の改正こそ、社会の基盤であり、また最小構成単位であった「家」という制度を破壊した原因だと考えています。均分相続制の導入により、仮に年老いた両親を子の誰かが養ったとしても、他の兄弟姉妹が相続に参加して財産を分与しなければならないので、かつてのような「家」という単位で老人の生計の維持や介護を行うのが難しくなります。社会全体でお年寄りの生活を支える公的年金制度や介護保険制度が拡充されるにつれて社会保障費も増大の一途を辿っていますが、元はといえば日本社会の伝統的な「家」制度が崩壊した結果ともいえなくはないと思います。

(友人F)少子高齢社会が到来し、ますます「家」という社会基盤の崩壊が進んでいるなかでは、老人の扶養だけでなく、子育てという意味でも問題が生じているのではないでしょうか。

(桜内)そのとおりです。民主党政権の目玉政策である子供手当も「社会全体で子供を育てる」といえば聞こえはよいのですが、本来、子供は「家」が育てるという伝統があったはずです。また、子供に対してではなく、親に対して現金を給付することが「社会全体で子供を育てる」ことにつながるのでしょうか。はなはだ疑問です。

(友人G)次に外交・安全保障政策としてはどうでしょう。

(桜内)日本の長い歴史をみれば、まずは自国の力で国家の独立を維持するということが保守主義の基本にあると考えます。ローマ帝国などの歴史を題材に独自の国家観、人間観を確立したマキャベリは次のように述べています。

金銭で傭うことによって成り立つ傭兵制度が、なぜ役立たないか、の問題だが、その理由は、この種の兵士たちを掌握できる基盤が、支払われる給金以外にないというところにある。これでは、彼らの忠誠を期待するには少なすぎる。彼らがその程度のことで、傭い主のために死ぬまでいとわないほど働くと期待するほうが、甘いのだ。だから、指揮官に心酔し、その下で敵に勇敢に立ち向かうほどの戦闘精神は、自前の兵士にしか期待できない。いかなる政体をもつ国家であろうと、それゆえ、国家を維持していこうと望む者は、自国民を武装させ、自国民による軍隊をもたねばならない。

国家の独立、自立を守るためには、自国民の力で国家を守る他はあり得ません。もちろん、自国の軍事力だけでは国家を守ることができない場合もあり得ます。その場合、他国との軍事同盟も必要となるでしょうが、そうであってもマキャベリの指摘の通り、まずは自国民の力で国家を守るべきだという基本は揺るがないと思います。

(友人H)そうはいっても、日本では第二次大戦で多くの人が犠牲になったし、その反省のもとに憲法9条も規定されているので、自国の軍事力を整備するのにも自ずと限界があるのではないですか。

(桜内)憲法については、以下の2つのことがいえると思います。

第1に、第二次大戦では、政府の意思決定の誤りによって300万人を超える方々の命が失われました。本来、政府の責務は国民の生命、財産、自由を守ることであるにも関らず、これほど大きな犠牲を出してしまったのです。旧憲法下での政府の意思決定の仕組みそのものに大きな過ちがあったと考える他はありません。僕は、政府の意思決定には、①民主主義的な多数決による「権力性」だけではなく、②将来世代の利益を含め、最大多数の最大幸福という「正当性」というものがなければならないと考えています。僕がこれまで従事してきた公会計制度改革も、国の財政面において「権力性」と「正当性」とを両立させるための統治機構改革を意味しますが、外交・安全保障という分野では国民の生命、財産が直接脅威にさらされるのですから、より一層、憲法の規定する統治機構のあり方について検討する必要があると思います。

第2に、憲法とは、国民の生命、財産、自由を守るという政府の目的と責任を規定し、そのために必要な政府の意思決定の仕組み(統治機構)を定めたものです。憲法9条を守って、その結果、国民の生命、財産が失われるようなことになれば本末転倒です。その意味でも、憲法を一切改正もできない不磨の大典と考えるのではなく、国民の生命、財産、自由を守るという政府の目的を達成するために、どのような意思決定の仕組み(統治機構)が望ましいのか、不断に検討する必要があります。

(友人I)では、経済政策という意味では、保守主義からはどのような具体的な主張がなされますか?

(桜内)先に憲法に関する考え方のところでも触れましたが、財政面でも政府の意思決定には、①民主主義的な多数決による「権力性」だけではなく、②将来世代の利益を含め、最大多数の最大幸福という「正当性」が必要です。現在、少子高齢化に伴い、社会保障制度が崩壊の危機に瀕しているのですが、僕は、そのような世代間格差の是正こそ、将来世代の利益を守り、より広い意味で最大多数の最大幸福という「正当性」を実現するために必要だと考えます。

(友人J)世代間格差の是正は、現在、とても重要な政策課題だと思いますが、具体的にはどのようにして実現するのですか?

(桜内)まずは年金や医療などの社会保障制度そのものを抜本的に見直し、若年層に過度な負担がしわ寄せされないような制度設計に改めるべきです。それと同時に、官僚統制、中央集権を打破することによって「小さな政府」を目指すべきです。具体的には、民間活力を最大限に引き出すための法人税減税や規制緩和を進める。民主党の支持母体である連合に所属する大企業の組合員、自治労、官公労、日教組だけが保護される硬直的な労働市場を改革し、若年層に多い非正規雇用者も含めて同一労働同一賃金を実現する。そういった真っ当な経済成長戦略を実施することが世代間格差の是正につながるはずです。

(友人K)ブログやツイッターなどネット上での議論では、「小さな政府」を目指すみんなの党に「市場原理主義」や「新自由主義」とのレッテルを貼って、「保守」ではないとの誹謗中傷もみられますが。

(桜内)最初に述べたように、自国の歴史や伝統を尊重し、秩序ある自由な社会を保守するために自らを改革することこそが保守主義です。単なる現状維持や、「小さな政府」を目指す規制緩和に反対することが「保守」ではありません。また、外交・安全保障のところでも述べましたが、自国民の力で自国の独立を維持することが保守主義の基本であって、単なる対米追随外交が「保守」ということではありません。

(友人L)なるほど。そのようにみてくると、保守主義というのはイデオロギーを振りかざすような大上段の議論というよりも、ごく普通の庶民が生活していく中にある歴史や伝統に根ざす常識的な考え方なのですね。

(桜内)そのとおりです。日本には有史以来、2000年を超える伝統が今もなお社会に息づいています。大和朝廷が成立した時代に生きた人々、平安京が栄えた時代に生きた人々、戦国の世に生きた人々、江戸時代に生きた人々、そして明治・大正・昭和の激動の時代を生きてきた人々は、時代こそ違えど、同じ日本人として日本の伝統の中で生まれ、そして死んでいったはずです。僕たちもその大きな歴史の中に生きていて、子どもたちへこの日本という誇るべき国を譲り渡す責務がある。そのように考えれば、みんなの心の中に保守主義は息づいているともいえると思います。

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Comments

相続と介護の問題については全く同じ思いです。それから、積立方式が維持できず賦課方式になってしまった公的年金が少子化の引き金になった可能性もあると思います。
http://blog.livedoor.jp/furusatochan/archives/1631548.html

歴史と伝統と言うとき、せめて江戸時代までさかのぼって、日本人はどのような生活を送っていたのか、振り返ってみるべきだと思います。明治期はおろか、戦時中や戦後に出来上がった制度を守ることが「保守」だと思っている人が多すぎ。

その意味で、桜内さんの保守主義は明解だし私の思っていることとほぼ同じです。

小さな政府という面で見れば、みんなの党だけが保守政党なのですね。このことも、周知していきたいと思います。

Posted by: 故郷求めて | April 13, 2010 at 15:48

桜内様

みんなの党の党員の者です。

家制度の崩壊が社会保障費の増大の原因(少なくとも遠因)であるとのご指摘がエントリ中にございますが、その問題意識は、一体いかなる具体的政策に結びつくのでしょうか?
例えば、現行民法の第4編・第5編を改正し、戸主権や家督相続の制度を復活させるべきである、あるいは、公的年金制度や介護保険制度を縮小すべきである、といったお考えをお持ちなのでしょうか?

また、エントリ中の家ないし家族に関する桜内様のお考えは、現在のみんなの党のアジェンダと整合するのでしょうか?

立法府に送り込む代表者を選ぶにあたり、是非とも事前に確認をしたく、不躾な質問をさせていただいた次第です。
ご解答を頂戴できれば幸いです。

Posted by: MATSUI Taku | April 24, 2010 at 14:45

MATSUI Taku様

桜内です。コメントありがとうございます。ご質問について、以下のとおり考えております。

1.「家」制度を一つの例示として取り上げた趣旨について
19世紀初期のアメリカの政治制度について分析した著作「アメリカの民主主義」(A. D. トクヴィル)の中で均分相続制度について触れており、「相続制度は私法(民法)の一部とされるが、社会の基盤を形作るという意味で公法としての機能を有する」(すみません、今、原典が手許にないので僕の意訳です)といったくだりがあります。その意味で、民法家族編・相続編を改正する際、単に新憲法が個人の尊厳、男女平等を掲げたから・・といった理由だけではなく、日本社会において「家」という制度が果たしてきた機能や役割についても十分に分析した上で、社会学や民俗学といった法学とは別の観点からも、いかなる制度が望ましいかということについて検討すべきであったと思い、そのような例を示した次第です。

2.具体的政策について
いくつかの政策オプションがあると思います。例えば、男女を問わず子の誰かに家督を譲ることを原則とし、均分相続は選択制とする。そのうえで家督を譲り受けた子は親の扶養義務を負うこととするという政策も考えられます。
現実に厚生労働省の統計(すみません、具体名を忘れました)によれば、親と同居している世帯はそうでない世帯と比べて持ち家比率が格段に高いという実態があります。ここからは推測ですが、親と同居し、住空間を享受する者は、他方で親を扶養する負担を負っているとも考えられます。しかし、仮に住居の所有権を親から子に譲渡していなければ、相続が開始されたときに兄弟で住居を含む遺産を分割しなければなりません。そのような結果が法的に予測される場合、親と同居する、あるいは親を扶養する義務を負うことを避けようとする制度的なインセンティブが働いてくるのではないでしょうか。
もし民法家族編・相続編を改正することによって、子が年老いた親を扶養する割合が高まれば、仮に国民年金のように月額数万円であったとしても孫にやる小遣い程度があれば、お年寄りの生活不安もいくらかは解消できるのではないでしょうか。要は、現在の公的年金制度はすべて金銭給付となっていますが、高齢者の生活不安の解消のため、同居家族による住居の保障、生活の保障という現物サービスの支給を促すような制度が望ましいと考えます。

3.みんなの党のアジェンダとの整合性
現時点において、みんなの党のアジェンダの中には民法家族編・相続編の見直しそのものは含まれておりません。しかし、新たな社会保障制度の枠組みをつくるということは謳われています。社会保障制度そのものではありませんが、民法家族編・相続編の見直しもその枠内で議論されることとなろうかと思います。
ちなみに、僕自身、昨年8月8日のみんなの党結党時のチャーターメンバーの一人です。これまでも、例えば政党法の制定といったアジェンダを渡辺代表に提案し、昨年の総選挙のマニフェストにも盛り込んでいただきました。また、みんなの党の成長戦略策定の議論にも積極的に関与しています。
民法家族編・相続編の見直しは中長期的な課題だと思いますが、僕の方からみんなの党のアジェンダの一つとして提案していきたいと考えています。

この他、何かご不明な点等がありましたら、いつでもご連絡をいただければ幸いです。

Posted by: 桜内文城 | April 25, 2010 at 07:59

桜内様

ご解答ありがとうございます。

ご趣旨はよく理解できました。
そのような家制度の見直しであれば、私も賛成です。
私の周りでも家族の機能不全は顕著です。
その要因は、おそらく一言で説明できるようなシンプルなものではないのでしょうけど、それに対し国がなしうる対策を、中長期的視点から家のあり方も含めて検討するというのは、まさに今必要とされていることだと思います。

また、私のような一介の党員の突っ込みに対して、大変詳細に説明してくださったことに重ねて感謝いたします。

Posted by: matu | April 27, 2010 at 22:14

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